軽度頻度: やや低い

術後の組織間に液体がたまる状態。自然吸収と治療の判断。

手術後に組織とバッグの間にリンパ液や組織液が貯留する状態。多くは自然吸収されるが、遷延する場合や感染リスクがある場合は穿刺吸引などの処置が必要。適切な surgical pocket 形成とドレーン留置で予防。

定義:漿液腫(Seroma)とは

漿液腫(Seroma)は、手術後に組織と組織の間にリンパ液・組織液・炎症性滲出液が貯留する状態です。バッグ式豊胸術では、バッグと被膜の間に発生することが多く、脂肪注入後も吸引部位や注入部位に生じることがあります。多くは数週間〜数ヶ月で自然吸収されますが、遷延する場合や感染リスクがある場合は穿刺吸引などの処置が必要です。

なぜ起こるのか:発生メカニズム

手術操作によりリンパ管や毛細血管が損傷されると、リンパ液や組織液が漏出し、死腔(dead space)に貯留します。バッグ挿入では、バッグの存在自体が死腔を拡大し液貯留を促進します。

炎症反応も漿液腫形成に関与します。手術による組織損傷は炎症性サイトカインを放出し、血管透過性を亢進させるため、さらなる体液の漏出を招きます。

特に注意すべきは「遅発性漿液腫(late-onset seroma)」で、術後6ヶ月以上経過してから片側性に出現する漿液腫はBIA-ALCLの可能性を考慮し、細胞診検査が必要です。

発生率・統計

・バッグ挿入後の漿液腫発生率:約1〜5%(亜臨床的なものを含めるとさらに高い) ・脂肪注入後の吸引部位発生率:約2〜8% ・遅発性漿液腫(late-onset seroma)の頻度:約0.5〜1%(BIA-ALCLとの鑑別要)

参照:漿液腫の管理に関する研究

症状・経過

・術後早期(1〜4週間)の局所的な腫脹・膨隆 ・波動を触知する(超音波検査で無エコー域として確認) ・軽度の疼痛・圧迫感 ・片側性の場合と両側性の場合がある ・遅発性(6ヶ月以上経過後)の片側性漿液腫はBIA-ALCLの除外が必要

超音波検査で診断は容易で、液面形成と厚みを評価します。

予防法

1

術中の徹底的な止血(血腫形成を防ぐ)。

2

適切なサイズのバッグ選択(過大なバッグは死腔を拡大する)。

3

surgical pocket の適切なサイズ設定(小さすぎず大きすぎず)。

4

術後ドレーンの留置(24〜48時間、漿液腫リスク低減に有効)。

5

術後早期の圧迫固定(胸帯・スポーツブラ)。

6

脂肪注入後は、吸引部位の適切な圧迫固定。

治療法

少量・無症状の漿液腫

経過観察で自然吸収を待ちます(多くは4〜8週間で改善)。

症状を伴う・遷延する漿液腫

・超音波ガイド下穿刺吸引(aspiration):色調・性状を確認し、細菌培養・細胞診に提出 ・吸引後の再発を予防するための圧迫継続 ・難治性の場合は外科的開窓術(capsulotomy)または被膜縫縮術

遅発性漿液腫

BIA-ALCL・感染症の除外のための細胞診・CD30免疫染色が必須。BIA-ALCL陽性の場合は、バッグ抜去+en blocカプセル切除術へ移行します。

漿液腫(Seroma)に関するよくある質問

Q.

漿液腫は自然に治りますか?

A.

多くの場合(約70〜80%)、数週間〜数ヶ月で自然吸収されます。ただし、大きくて疼痛を伴う場合や感染リスクがある場合は穿刺吸引が必要です。

Q.

漿液腫とBIA-ALCLの違いは何ですか?

A.

術後早期に発生する漿液腫のほとんどは術後変化として問題ありません。しかし、術後6ヶ月以上経過して片側だけに出現する漿液腫(遅発性漿液腫)はBIA-ALCLの可能性を考慮し、必ず細胞診検査を行う必要があります。

Q.

穿刺吸引は痛いですか?

A.

局所麻酔下で行うため、痛みは最小限です。超音波で確認しながら穿刺するため、安全に施行できます。吸引後はしばらく圧迫を続けることで再発予防になります。

リスクを正しく理解して施術を選ぶ

合併症のリスクを正しく理解することは、安全な施術を受けるための第一歩です。 カウンセリングでは気になるリスクについて医師に直接質問し、納得した上で施術を決めましょう。

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